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本編の最初と最後に登場した『ハル』君のお話です。
本編は一応完結いたしましたが、このお話は1部の始まりと、もし第2部を書くなら、
のプロローグも兼ねています。
既に書いてはあったので、とりあえず投稿しておきます。
なお、内容はオリジナルなので、ネタばれはありません。
読んでいただく場合は、つづきをどうぞ。
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[アトランティス]
「海都アトランティスか、ついにここまでやってきたんだな。」
ハルは感慨をこめてそうつぶやいた。
隣にいる赤髪の双剣士、アルファドが答える。
「アトランティスの民の話によると、イリスはアースガルドへ旅立ったみたいだ。
目的も、真偽のほどもさだかじゃないがね。
あと、酒場のじいさんの話によると。アースガルドへ行くには<虹の橋>と
呼ばれる道を通らないといけないらしい。
さみゅ、虹の橋について何か情報はあるかい?」
さみゅと呼ばれた少女は表情も変えずにアルファドに向き直る。
さみゅはアトランティスの科学技術で作られたヒューマノイドである。
「情報検索。虹の橋、通称<ビフレスト>とは非科学的なものではない。
以前アースガルドから科学の力がこのジエンディアに伝わった。アースガルドの
民がジエンディアを訪れる際にその科学の力をもって作られた次元転移装置。
それがビフレスト。
しかしその装置の所在及び、現在も稼動しているかどうかは不明。」
「科学ってのがなんなのか、俺にはさっぱりだよ。あいかはどう思う?」
「うーん、そうだねぇ・・・。」
あいかと呼ばれた少女は首を捻り少し考え、こう言った。
「・・・わかんない。」
「・・・お前に聞いた俺が馬鹿だったよ」
アルファドはがっくりと肩を落とす。
ハルはさみゅに問いかける。
「しかし海の底に本当にこんな都市があったなんてな・・・。そもそもこの都市は
誰が何のために作ったんだ?」
「アトランティスは、本来ミッドガルドをはじめとする遥か昔の古代文明が残した
超科学を世界に伝えるための基盤。
ジエンディアが過去の紛争がきっかけで廃退した後、ミッドガルドは救いの手を
伸べた。
しかしいきなり水準の高い文明と技術を伝えるのはあまりにも危険。そのため、
ミッドガルドとジエンディアをつなぐ役割として作られたのが、この都市、
アトランティス。」
「なるほど、各町にあるタウンポータルなんかもその技術をうけついだ
産物ってわけか。」
「そう。だけど、アトランティスが伝えた超科学技術をジエンディアの民は欲した。
そのため各地には戦争が絶えず起こった。
だからミッドガルドの民はジエンディアの民との接触を絶つためにアトランティス
の外界にバリア型の結界を張って隠した。
それが<神の守護>」
「うへぇ、難しすぎて俺にはサッパリだよ。」
アルファドはそういいながら両手を挙げる。
「人はその手に余る力を欲してはいけない。それは争いと悲劇を生むだけだ。
いずれにしてもさらにイリスの足取りを追うなら、その虹の橋とやらを
探さないといけないな。
しかし残してきたギルドと王宮の様子が気になる。
俺は一度エリアスに戻ろうと思うが、皆はどうする?」
「そうだな、俺はアトランティスの遺跡にいって色々調査してみようと思う。
さみゅ、一緒にきてくれるかい?」
「了解。同行する。」
「あいかはどうする?」
「んー、私はねぇ・・・、もう少しここにいる。
なんかクルクル回ったり、ゴーってなったりして面白いから!」
アルファドはその答えを聞いて再度肩を落とした。
「よし、じゃあここで一旦別れよう。状況を確認したら俺もアトランティスに
戻ってくる。そのときにまた落ち合おう。
アルファド、さみゅ、気をつけてな。」
「ああ、ハルも『月の光』ギルドのメンバーによろしくな。」
「確かに伝えておくよ」
[エリアス]
[月の光ギルドルーム]
ギルドルームに戻ったハルをフリアータが迎える。
「おかえりハルさ。アトランティスはどうやった?」
「その話はまたあとでゆっくりさせてもらうよ。
こなたさん、ひとまず今の王宮とギルドの状態はどうなってる?」
「ギルドについては特に変化なしってとこかな。ただ冬の魔王が復活する
とかいううわさを聞いた。」
「まさか古の魔王ビントーか!?あんなものが復活したら世界は大変なこと
になるぞ!!」
「だけど、ただのうわさだし、本当かどうかは・・・」
「実際に復活してからでは遅い。一度調査に行こう。フリさ、ナタリアさ、ヘレンさん、
一緒についてきてくれないか?
こなたさんは申し訳ないけど留守を頼む。」
「わかった。気をつけて。」
「何もなければそれが一番なんだが・・・」
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[アトランティス]
街内をブラブラしていたあいかは偶然にも街の外れに経っているイリスの石塔を
発見していた。
石塔に残されているメッセージを聞いてみようとしたあいかの元に光と共に一人の
少女が舞い降りる。
「あなたはまさか・・・」
あいかの言葉は続かず、次の瞬間、あいかの目前に現れた少女は光を放ち
あいかと共に姿を消した。
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[アトランティス遺跡]
アルファドはたった今、驚くべき光景を目にしていた。
遺跡の奥には過去の立体映像を投影するシステムが残っていた。
装置は壊れているようだったが、さみゅは自分と装置をアクセスし、残っていた内容の
映像をその場に映し出す。
それは400年前のジエンディアの紛争の様子、逃げ惑う人々を焼き払う炎、
まさに地獄絵図だった。
堕落した支配層と強欲な勢力によって起こされた紛争とアルファドは聞いていたが、
目にした事実は違った。
その紛争すらも実は今のエリアス王宮の祖先たちが企てたものであり、それを治めて
尽力を尽くしたように見せかけた当時の女王は、このエリアス、しいてはジエンディア
大陸をを影ながら支配していったのだ。
(これがエリアス王族の正体だと・・・!?クソッ!!)
アルファドは地面に拳を打ち付ける。
(俺達が命をかけて戦い、守ってきたものはなんだったっていうんだ・・・まてよ・・)
突如アルファドの頭にある閃きが走る。
(イリス一行を裏切ったとされている、ジョアン・ファーム。
彼女もこの遺跡を探索していたようだし、当然この事実を知っていたはずだ。
そしてその後、魔王と相対したイリスは魔王を倒したということだったが、
その後に彼女も姿を消した・・・。
俺がこのジエンディアにやってきたときに見たイリスの映像、その中で魔王はイリスに
何かを語りかけているようだった。
それがきっかけでイリスがジエンディアの民の過去の過ちを知り、この世界に絶望した
のだとしたら・・・?)
「さみゅ、一旦街に戻ってあいかと合流しよう。」
「了解した。」
(なんてこった・・・!)
アルファドは手元の剣で装置を叩き壊した。
そのとき二人の背後に人影が現れる・・・。
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[厳冬のラビリンス]
(まさか本当に復活してるとはな。)
ハル達は古の魔王、ビントーと相対していた。
完全に復活していない状態ではあったが、それでもビントーの持つ魔力はすさまじく、
4人は近づくことすらままならない状態だった。
「俺が奴の懐に飛び込む。フリさとナタリアさは援護を頼む。
ヘレンさんは皆の回復を頼む。」
「了解。」
フリアータは手元の弓を魔王ビントーに向けて引く。
「任せて。」
ナタリアは弾丸の補給を済ませ、同じく魔王に向けて構えた。
「いくぞ!!」
ハルはビントーの懐に向けて走った。
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[エリアス王宮]
「まさか魔王ビントー復活のうわさが真実であったとは・・・。
しかしそれを未然に防ぎ、魔王を倒して戻るとは!月の光ギルドの者達よ、
今回の働き、誠に見事であった!!
ついてはお前達、月の光ギルドを正式に我が王宮のギルドとして迎えたいが、
どうかな?
「光栄です。今後も王宮とこの世界のために尽くさせていただく所存です。」
「騎士ハルよ。お前には聖騎士の称号を与える。
今後はワシの元に遣えて王宮の警護を指揮してほしい。」
「はい、私ごときでよろしければ・・・」
「今宵は宴じゃ!皆盛大に行おうぞ!!」
『どこの馬の骨かもわからぬものを王宮つきの聖騎士だと、
王は一体何を考えておるのだ・・・』
『それについては私に考えがあります。』
『ほう。ではこの件についてはお前に任せよう。うまくやるのだぞ。』
『承知。』
[王宮 北群自室前]
(俺に用があるということでやってきたが・・・北群様は一体何用なんだろうか・・・)
コンコン。ハルはドアをノックしたが返答はない。
「北群様?僭越ながら騎士ハル、ここに参りました。」
しかしやはり返答はない。
ハルはしばらく扉の前で待っていたが、一向に返答はなかった。
(しかたない・・・)
「北群様、失礼致します。」
ドアノブに手をかけ、捻る。
カギはかかっておらず、扉はあっさり開いた。
「北群・・・様・・・!?」
そこには血まみれで倒れている一人の男がいた。
ハルは慌ててかけよる。
「北群様ご無事ですか?一体何があったのです!?」
北群の下にかけよったが、既に事切れていた。
「何者だ!?」
その時、部屋の前に一人の兵士がやってくる。
「貴様は騎士ハル!北群様を殺害なさるとは一体どういうつもりだ!?」
兵士は持っていた笛を吹いて、仲間を呼んだ。
「違う、俺じゃない!!」
「問答無用!北群様殺害の容疑で貴様を束縛させてもらう!!」
「クッ・・・!」
ハルは兵士を押しのけ、部屋を出た。
(くそっ、これは一体どうなってるんだ・・・!?)
既に王宮内は騒がしくなっており、多くの兵隊が巡回を始めている。
(手際がよすぎる。何者かの陰謀か・・・?しかし一体誰が?)
裏道からハルを呼び止める声が聞こえる。
「ハルさんこっち・・・!」
ハルを呼び止めたのはこなただった。
こなたはハルに問いかける。
「一体どういうことです。ハルさんが北群さまを殺害したってうわさで王宮内は
持ちきりです。兵士達がハルさんを探してあちこちをうろうろしています。
月の光ギルドメンバーもその嫌疑により王宮に呼び出されています。
私は一足先に皆にこのことを告げ、龍京へ退避させました。
ギルドルームは今はもぬけの空です。」
「そうか、いい判断だ。ほとぼりが冷めるまで皆にはそのまま隠れているよう
伝えておいてくれ。」
「王宮で一体何があったんですか?」
「今は詳細を伝えている暇はない。こなたさんもこの場から早く離れてくれ。
奴らの狙いは俺だ。俺が兵士達をひきつけてこの場を離れる。
その隙に行ってくれ。」
そういってハルは月のエンブレムをこなたに渡す。
「ギルドを頼む・・・!」
そういい残し、ハルは通路に出ていった。
『いたぞ、ハルだ!なんとしても捕らえるのだ!!』
「ハルさん・・・」
こなたはその後をしばらく見つめていたが、意を決したように、その場を離れた。
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[ベス]
(くそ、一体どうなってるんだ・・・)
アルファドは困惑していた。
体のあちこちがズキズキと痛む。気を抜くとその場に倒れこんでしまいそうだったが、
あまりに衝撃的な出来事と彼の強靭な意思がそれを許さなかった。
(俺の力が全く通じなかった、だと・・・)
アルファドは右手で額を抑える。
ぬるりとした感触が彼の右手に走る。
手には赤い血液がべっとりと付着していた。
「さみゅ・・・あいか・・・」
アルファドはついに力尽き、その場に倒れこむ。
(力だ、俺にはもっと強大な力がいる。二人を助けるためにも・・・)
そこで彼の意識は途絶えた。
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[ベロス山中]
エリアスの街を抜け出したハルはベロス山中にきていた。
その時、辺りはすっかり夜になっていた。
(ふー・・・、どうやら追っ手はまいたみたいだな。ん、あれは・・・?)
ハルの視線の先にワーウルフの群れがうなり声をあげ、何かを睨んでいた。
その視線の先にうっすらと人影が見える。
(できれば今、人との接触は避けたかったが・・・。さすがに放ってはおけない、か!)
ハルは意を決し、ワーウルフの元に降り立った。
・・・これがハルと一人の少女との運命的な出会いとなる。
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外伝という形で分類しつつも、始まりと終わりを匂わす内容なので、この妄想ストーリーの
核の部分になってます。
なお、今回初登場のアルファド、ぁぃか、さみゅcの3人ですが、知人サイトのi一部の設定
のみ流用させていただいています。
(ご本人様には確認済み)
同一人物というわけではありませんので、そこはご容赦願いますm(_ _)m