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2007/6/17開始 2007/8/10改装&リネーム                                                                    ©2006 Actozsoft, All right reserved. ©2006 Gamepot Inc, All right reserved.
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七夕・・・中には何か書きたいと思ったのですが、間に合わなかったので、翌日にアップ(ぁ
七夕にちなんだ話を考えてみました。

個人的な都合上、色々とめんどくさかったので、更新日付が過去になってるのは気にしないでください。

今回はギャグではなく、ちょっとしんみりとした話内容だったりします。
それでもお読みいただく場合、つづきをどうぞ。

 ラテール
ジエンディアサイドストーリー 番外編
              ~レイフィム~
 
「その6.短冊に願いを・・・」 



[龍京]

 龍京の町の奥に大きな木が立っており、笹の葉が青々と茂っている。
クロカゲは手に持った小さな紙切れを一枚、その笹の葉にくくりつけた。
 
「これでよしっと・・・おや?」
 
少し背伸びしながら紙についた紐の部分を葉の茎の部分に結びつけた後、視線の先に
見慣れた人物の後頭部が見えることに気づいた。
 
「・・・レイフィム?こんなところで何やってるんだい?」
 
クロカゲがその人物に声をかけるとその人物は驚いた様子で全身をビクっと奮わせる。
そしてクロカゲの姿に気づくと、プイっとそっぽを向いた。
 
「・・・なんでもない。」
 
「あ、もしかして・・・」
 
クロカゲはその様子を見てにやりと笑うと、レイフィムの腹部を軽く肘でつついた。
 
「願いことの短冊を書いて、木に吊るしてたんだろう?」
 
「・・・違うわよ。」
 
おや?レイフィムのことだから、慌てふためくか、激昂でもするかと思いきや、
返ってきたのは冷たい返事である。しかしクロカゲは気にせず続ける。
 
「わかってるよ、レイフィムのことだから、『素敵な彼氏ができますように』とかって
願いを書いて吊るしたんだろう。わかってるって。」
 
笑いながらポンポンとレイフィムの肩を叩くクロカゲ。しかし・・・
 
ボカッ!!
 
クロカゲの一言を聞くなり、レイフィムは顔を真っ赤にし、グーでクロカゲの頬を殴った。
その勢いでクロカゲは後方に弾かれ、尻餅をつく。
 
「い、いきなり何するんだよ!?」
 
「うるさい!あんたがいつまでもつまんないこと言ってるからでしょ!!」
 
やっぱり変だ。
怒るにしてもいつものレイフィムらしくない。
 
クロカゲは頬の痛みに耐えながらもなんとなくそう感じていた。
 
話はちょうど1年前に遡る。
 
 

 
「やれやれ・・・仕事とはいえ、なんだかやりきれないね。」
 
冒険者のうちの一人、緑の長髪が特徴的な少女がぼやく。
 
ドカッ!!
 
その言葉に応じるように、隣にいた青年は拳で強く地面を叩いた。
 
「くそっ・・・本当に俺達にできることはもうなかったのかよ・・・」
 
その青年もなんだかやりきれないようで、拳を震わせながら、唇を強く噛んでいる。
 
「・・・しょうがないさ。僕達は神様でもなんでもない。ただの人間なんだから。」
 
「・・・」
 
少女にたしなめられながら青年は立ち上がり、なんとか再び歩きだす。
しかしそこに立ちふさがる一つの影・・・。
 
「そこの二人、待ちなさい!」
 
現れたのは一人の少女だった。。
 
「・・・僕達に何か御用かい?お嬢ちゃん。」
 
緑髪の少女は伏目がちに突然目の前に踊り出た少女を見据える。
その目には鋭い怒りが込められている。
 
「黙って有り金を全部おいて、ここから立ち去りなさい。
・・・痛い目に会いたくなかったらね!!」
 
冒険者達の前に躍り出た少女はそう言いながら、背の弓を取り出し、二人に向けて
矢を構えて威嚇する。
 
「・・・追い剥ぎか。しかし随分可愛いらしい追い剥ぎだな。」
 
冒険者の青年は軽くため息をついた後、一歩前へ出た。
見据えた目の前には、小柄な体格に幼い顔、恐らく年は14、5くらいだろうか。
 
青い髪のツインテールを揺らしながらこちらを威嚇している少女の姿が映る。
 
「何よぅ。抵抗する気!?」
 
ヒュン・・・ドサッ!
 
青年は一瞬懐に手を入れるとそのまま目の前の少女の手前に向けて、何かを放った。
 
「ちょ・・・」
 
隣にいた少女は驚いたように青年の方に眼を向ける。
青年は懐の布袋・・・財布を放ったのである。
 
「うんうん、良い心がけよ。」
 
目の前の少女はにっこりと笑いながら、目の前に落ちた財布を拾おうとした。
そこで青年は口を開く。
 
「そいつはくれてやる。けどな・・・」
 
青年は真っ直ぐに少女を見据える。
 
「今お前がやっていること。その意味を一度きちんと考えたほうがいい。」
 
「ふん、だ。お説教なんて聞きたくないわよ!」
 
少女は布袋を拾いあげると、素早くバックステップする。
そして後ろ向くと全速力で走り出した。
 
「もらうものさえもらったら用はないわ。じゃあね、バイバイ!!」
 
少女の足は速く、数秒もすると、その姿は完全に見えなくなった。
そしてその場には冒険者二人だけが残される。
 
「どうしてそのまま行かせちゃったんだい?君なら・・・」
 
「相手にするのが面倒だっただけだよ。それに・・・」
 
青年は少女が走り去ったほうに一瞬目を向けた後、再度振り返る。
 
「大した額は入ってなかったから問題ないよ。今回は結局無報酬だったし、
今までの仕事の報酬は、大概あのクソオヤジにとられてるし、な。」
 
そして青年は小さく舌打ちした。
その隣で少女はクスっと笑う。
 
「・・・なんだよ?」
 
その姿が面白くなかったのか、青年は少し頬を膨らませる。
 
「なんでもない。それじゃ行こうよ。」
 
「あ・・・ああ。」
 
少女に促されて、青年は再度歩きだした。
 
 

 
(何よあいつ、全然お金持ってないじゃない!)
 
少女は己のうかつさを呪っていた。
こんなことならば、中身をきちんと確認するべきだった。
 
(しょうがない、少し時間をおいてほとぼりが冷めたらまた・・・)
 
そしてふと少女は足を止める。
目の前には大きな木が立っており、生い茂る葉には何やら紙切れが大量にくくりつけてある。
 
(そっか、今日は七夕なんだ。)
 
少女は一瞬呆然としながら木を見上げたが、興味なさそうに再度歩きだそうとする。
 
(神だのみなんてくだらないわ。頼れるのは自分自身の力だけよ!)
 
ガツッ!カランカラン
 
前へ行こうと踏み出した右足に何か棒のようなものが当たる。
 
「あっ・・・!!」
 
ドサリ、棒を支えにしていた少年は、支えを急になくしたことが原因で、その場に倒れてしまう。
 
「あっ、ごめん。」
 
少女は自分が目の前の少年の杖を蹴り飛ばしてしまったことに気づく。
さすがに悪いと思ったのか、杖を拾って、少年につき返した。
 
「ほら、これ。」
 
「あ、ありがとう。」
 
少年は少女の突き出した手から杖を受け取ろうとしたが、少年の手は何もない空中を何度かまさぐる。
 
(何、まさかこの子、目が・・・?)
 
「お姉ちゃんもお願いごとしにきたの?」
 
「え、私・・・?」
 
少女は少し気まずくなる。
目の前にいるのは小さな少年とはいえ、まさか仕事後、人ごみに身を隠すためだけに寄ったとはいえない。
 
「ま、まあ、そういうことよ。」
 
とりあえずそう返すことにする。
 
「やっぱり、僕もなんだよ。」
 
嬉しそうに微笑む目の前の少年。
しかし少女は別のことに気をとられていた。
 
(やばいなぁ、そろそろこの場から離れないと、でも・・・)
 
少女はチラリと少年のほうを見る。
少年の手は少女の服の裾をしっかりとつかんでいた。
 
「お姉ちゃん、名前はなんていうの?」
 
「・・・私?私の名前はレイフィムよ。」
 
レイフィム。少女は自分の名をそう名乗った。
 
「じゃあレイフィムお姉ちゃんだね。初めまして。」
 
少年はそういうと自分の小さな手をレイフィムに向かって差し出す。
 
「あ、うん。よろしく。」
 
レイフィムは少年の手を握り返した。
 
「で、私はそろそろ行きたいんだけど、手、離してくれない?」
 
すると少年は首を横にブンブンと振ったあと、レイフィムの服の裾を強く握りなおした。
その姿にレイフィムは小さくため息を漏らす。
 
(さすがに振りほどいては・・・いけないか。)
 
レイフィムはあきらめ、少年に向き直る。
 
「人に名を聞くときは自分も名乗るもんよ。あんたの名前は?」
 
「僕はレオ・・・」
 
少年はおずおずと自分の名をそう名乗った。
 
「レオ・・・ね。それで、レオは何をお願いしたの?」
 
レイフィムは目の前の少年になんとなく聞いてみた。
するとレオは恥ずかしそうにうつむく。
 
「お母さんに会いたいって・・・」
 
「お母さん?あんた、お母さんいないの?」
 
「うん、少し前に仕事で遠くに行かなきゃいけなくなったんだって。
だから今は僕は一人なの。・・・でも」
 
「エリアスの街の人達が教えてくれた。この木にこうやってお願い事すれば、
願いが叶うって。だから僕はおにいちゃんたちにここまで連れてきてもらったんだ。」
 
「そっか、叶うといいわね。」
 
レイフィムはそう言い残して立ち上がり、再度立ち去ろうとする。
しかしやっぱりレオはレイフィムの裾から手を離そうとしない。
 
「・・・ふぅ、どうして離そうとしないかな。私なんかといても楽しくないでしょうに。」
 
「・・・から」
 
少年はポツリと何やらつぶやいた。
 
「え?」
 
「お姉ちゃん、寂しそうだから。僕と同じように・・・」
 
ズキン
 
何気なく言い放った少年の一言がレイフィムの心に突き刺さる。
 
パシッ!
 
少年の言葉を聞いた後、少女は自分の裾をつかんでた少年の腕を払った。
 
「・・・寂しくなんかないわよ。」
 
「・・・嘘だよ。僕にはわかるんだ。」
 
少年のその一言にレイフィムはカチンときたようだ。
 
「あんたなんかに何がわかるっていうのよ!
私は物心ついたときからずっと一人で生きてきたの!」
 
「お姉ちゃん・・・」
 
レオの自分を見る目に再度ズキンと胸が痛む。
しかしレイフィムは止めることができない。
 
「泣いても、すがっても、誰も助けてはくれない!結局頼れるのは自分だけなのよ!」
 
そこまで口に出した後、レイフィムは少年を残し、その場から走り去った。
なんだかいたたまれなくなったためだ。
 
(そう、私は今までそうやって生きてきたんだ。そして、これからも・・・)
 
走りゆくレイフィムはもう振り返ることはなかった。
 
 

 
(はぁ、はぁ・・・)
 
息を弾ませるレイフィムは周囲を見渡す。
一心不乱に走った結果、街外れの街道までやってきたらしい。
 
(なにやってんだろ、私。あんな小さい子の言葉なんかに動揺して、馬鹿みたい。)
 
レイフィムは足を止めると、ふと頭上を見上げる。
しかしその直後。
 
ザッ
 
(!?)
 
突如、現れた数人の夜盗がレイフィムを取り囲んだ。
 
(くっ、私としたことが、周囲の気配に気づかないなんて・・・!)
 
レイフィムは唇を強く噛んだ。
どうやら、街を出た辺りからつけられていたらしい。
 
「よぅ、小娘、元気そうじゃねえか。」
 
そしてレイフィムの目の前に男が一人近づいてくる。
レイフィムはその男の顔に見覚えがあった。
 
そうだ、先日、一人のときを狙って有り金を巻き上げた男だ。
 
「あのときは不意をつかれたが、今回はそうはいかねえぜ?」
 
男は下卑た笑いを浮かべながら、ゆっくりとレイフィムに向けて足を進める。
しかしレイフィムは臆せず口を開く。
 
「何?私に財布を盗られたのがそんなに悔しかったわけ?
いっとくけど、あんたみたいな悪党が持ってたってロクなことに使わないから、
この私が有効活用してあげただけよ!どう?嬉しいでしょう!?」
 
「なんだとぅ!?」
 
レイフィムの言葉に男は怒りをあらわにする。
しかしレイフィムは止まらない。
 
「なによ、こんな少女一人に対してこんな大人数でさ!!
大体、弓構えられただけでビビってた奴が、何えらそうにしてるのよ。
今日は複数でいるから気が大きくなってるわけ?ほんとつまんない奴ね!!」
 
「て、てめえ!!」
 
レイフィムの言葉にムキになった男は、無造作にレイフィムの腹部を蹴り上げた。
 
「ぐ・・・ごほっごほっ!!」
 
衝撃でレイフィムは激しく咳き込む。
 
「ああそうさ。だが、俺様がつまらねえ奴だってんなら、テメエがやってるこたぁなんだ?
ガキの頃からたった一人で夜盗まがいの真似をして、一般市民に迷惑かけ続けてきただけだろうが!」
 
夜盗の言葉がレイフィムをえぐる。
 
「テメエも俺達と同じだ。いや、いなくなっても悲しむ奴がいない分、俺ら夜盗以下ってわけだ!!」
 
はいつくばるレイフィムの背中を夜盗の男は踏みつける。
 
「大人しく市民だけ襲ってりゃいいものを。何を勘違いしたのかしらんが、俺らの財布にまで
手をつけたのが運のツキだったな。」
 
そして男は腰から剣を抜き放ち、地面のレイフィムに切っ先を向けて構える。
 
「オトシマエつけてやるよ・・・死ねやぁ!!」
 
そして勢いよく振り下ろそうとしたその瞬間・・・
 
ガキン!!
 
突如飛来した何かに男の剣は弾かれ、宙を舞う。
 
「だ・・・誰だ!?」
 
男が驚き、飛来した方向に目をやる。
そこには一人の青年が何かを投げた状態で手を止め、立っていた。
 
「あ・・・あんたは・・・」
 
レイフィムはかろうじて顔をあげ、青年のほうに目をやった。
先ほど財布をいただいた青年である。
 
「あれ、お前は・・・」
 
青年のほうもレイフィムの存在に気づいたのだろう。
驚きの声をあげる。
 
「これはまた奇遇だな。とりあえず助けてやるから、もう少し我慢してな。」
 
余裕を持った態度がシャクに触ったのか、男は周囲の夜盗に対して合図を飛ばす。
 
「ふ・・・ざけやがって!素手でどうしようってんだ!
やっちまえ!!」
 
男の合図で、周囲の夜盗たちは青年のほうに向かって走る。
そしてそれぞれの武器を構えて振り上げた。
 
「素手?あんたら何か勘違いしてないか?」
 
「・・・あ?」
 
青年はそう言って右手を前に突き出すと、飛来した長物を軽くキャッチする。
先ほど男の手から剣をはじいた『それ』は見事に弧を描き、青年の手元に戻ってきたのだ。
 
ビシュッ!ヒュン!!
 
そして青年が目にも止まらぬ速さで手にした武器を振るう。
身の丈ほどもある棒状の武器は・・・槍だった。
 
ドサドサ
 
そしてその直後、青年に向かって飛び掛った夜盗たちはそろって地面へとダイブした。
 
「んなっ!馬鹿な!!」
 
一瞬何が起こったのかわからない夜盗の男はうろたえる。
 
「実はその子は俺の知り合いでさ。悪いけど、見逃してやってくれないか?」
 
「そんなことできるわけ・・・」
 
ビヒュン!!
 
男が呻いたその一瞬の間に青年は男の懐に飛び込んでいた。
そしてそれと同時に槍の穂先を男の喉下につきつけている。
 
「もう一度言う。・・・見逃してやってくれないか?」
 
そしてそのまま、トーンを落とした声で男に諭すように再度つぶやいた。
 
「・・・」
 
コクコク
 
その結果、男は声にならない悲痛な表情のまま、小さく首を縦に振った。
 
「そうか、お利口さんだな。じゃあそのまま行きなよ。・・・まあ」
 
「ひ・・・ひいぃぃ!!」
 
男は青年が言い終わらぬうちにその場から駆け出した。
しかしその直後、男の眼前を光の筋がきらめく。
 
「無事に逃げられれば・・・の話だけどね。」
 
見ると夜盗の男が逃げ出したその先には、先ほど青年と一緒にいた少女が青年と
同じ獲物を持ち、立ちふさがっていた。
 
素早く振りぬいたその槍は、男の両手を肘から絶ち、跳ね飛ばしていた。
 
「やれやれ、相変わらずお前は甘いなぁ。こんな夜盗達、逃がしてもまた人々に
害を与えるだけだってのにさ。」
 
「ぐ・・・え・・・」
 
両手を跳ね飛ばされた夜盗の男はその場に倒れこんだ。
どうやら痛みとショックで気を失ったようである。
 
「まあそういうなよ、ルディス。どうせお前がしとめてくれると思ってたからさ。」
 
青年はそう言って肩をすくめた。
そしてそのまま腰を落とし、倒れている少女に向かって手を伸ばす。
 
「ほら・・・立てるか?」
 
 

 
「い、一応、礼は言っておくわ・・・」
 
レイフィムはバツが悪そうに顔を背けながら、かろうじてそれだけ言った。
 
「それにしてもあんた、あれだけの腕を持ってるなら、なんでさっきは私に素直に従ったのよ?」
 
レイフィムは目の前の青年に向かって聞いてみた。
 
「ん?俺には少女を殴る趣味はないしなぁ。それにそんなに悪人にも見えなかったし、
金も少なかったからまあいいかってね。」
 
青年は軽く笑いながら、そう返した。
しかしその直後、真剣な顔つきに戻る。
 
「けれど、自分がやったことがどういうことかは身に染みて知ったろ?」
 
「・・・」
 
レイフィムは言葉を返すこともできず、唇を噛む。
 
「確かにお前みたいな小さな子が生きていくのは大変だったかもしれない。
けど人様の物を奪うってことは、その人に自分の不幸を押し付けるだけだ。
今回のようなことも起こしかねないし、な。」
 
バン!!
 
レイフィムは突如、地面を両手で叩いた。
 
「じゃあ・・・どうすればよかったっていうのよ!?
どうせあなた達は両親に可愛がられて育ったんでしょ!?
私はずっと一人で生きてきたの!綺麗事だけじゃここまで生きてこれなかったのよ!!」
 
この言葉に緑の髪の少女が反応する。
 
「・・・辛い思いをしてきたのはなにも君だけじゃないさ。」
 
この言葉の含みを青年は知っているのだろうか。
ふぅ、と大きくため息をついた。
 
「ところで君はさっき、龍京に言ったんだろう?そこに立つ大きな木を見たかい?」
 
「・・・木?」
 
「実は俺達はある人の依頼で、龍京のその木のところまで、一人の少年を連れていったんだ。
どうしてもお願いしたいことがある、ってね。」
 
(少年・・・?それって・・・)
 
レイフィムの脳裏に先ほど出会った少年の姿が浮かび上がる。
 
「その子は幼い頃に夜盗に襲われ、夜盗どもに自分の両親を殺され・・・
そして自身も目と足に重症を負ったんだ。」
 
「そしてその時のショックで、随分と長い間寝たきりの生活が続いたらしい。
当然だよな。小さい頃の出来事だし、子供が一人で体に障害を負って生きていけるほど
この世界は優しくはない。」
 
「・・・」
 
レイフィムは黙って目の前の青年の言葉に耳を傾ける。
 
「ところがその少年は腐らなかった。必死の思いで歩けるようになり、目が見えない状態
でも、周囲の人たちの手伝いを積極的に行おうとした。もちろんできる範囲で、ね。」
 
「その必死な姿を見て、周囲の人たちは心を震わせた。そしてこの子だけでも立派に
育ってほしいって助けたい、ってすすんで協力したそうだ。
 
住民の協力もあり、少年は徐々に成長していった。けれど・・・」
 
そこで青年は言葉を区切り、少し悔しそうにうつむいた。
 
「元々身体の弱かった少年は、ある日重い病にかかり、病院生活を余儀なくされた。
医者に見せたときには既に手遅れの状態で、余命一ヶ月と宣告されたそうだ。」
 
「え・・・?」
 
レイフィムには青年の言った言葉の意味が理解できない。
 
「けれど少年はあきらめなかった。両親と交わした、たった一つの約束のために・・・。」
 
「ちょ・・・ちょっと待って!!」
 
そして耐え切れなくなったレイフィムは青年の言葉を遮り叫ぶ。
 
「その子って・・・今どこにいるの!?」
 
「・・・もうどこにもいないよ。」
 
「・・・え?」
 
そして青年の口より、信じられない言葉が告げられる。
 
「その少年はつい先日亡くなった。煩った心臓病が原因だ。」
 
 

 
「・・・誰?」
 
少年は部屋に入ってくる人の気配に気づく。
 
「僕達はこの村の人達の頼みでここにやってきた。
君の頼みを聞いてやってほしい、と。」
 
「そう・・・ですか。」
 
少年は少し悲しそうな顔をした後、言葉を続ける。
 
「もし・・・僕の願いを聞いていただけるのであれば・・・」
 
そして少年は言葉を続ける。
 
「明日7月7日に僕を龍京に連れて行っていただけませんでしょうか?」
 
「それは・・・」
 
青年は少年に追及しようとしたが、一緒にいた少女が青年の肩をつかみ、無言で首を振る。
 
「・・・わかった。その願い、聞き受けるよ。」
 
「感謝します・・・。」
 
そして青年はベッドから少年を下ろし、肩に背負おうとした。
 
「大丈夫です。自分で歩けます・・・。」
 
しかし少年は気丈にも自力で立ち上がり、歩こうとする。
 
「できる限り、自分の力で行きたいんです。」
 
青年は少年のその気丈な姿に涙しそうになったが、こらえる。
 
「わかった。でも、辛くなったらすぐ言うんだよ。」
 
「・・・はい。」
 
「一つだけ聞いてもいいかな?」
 
青年と一緒にいた少女はためらいながらも意を決して、少年に問いかける。
 
「はい、なんでしょう・・・?」
 
「君はどうしてそんなに強くいれるの?この世界を呪ったり、絶望したりはしなかったのかい?」
 
「馬鹿!お前、そんなこと・・・!」
 
少女の発した言葉を青年は慌てて止めようとしたが、少年は首を振った。
まるで「いいんです」といわんばかりの行動である。
 
「僕は強くなんてありません。一人になるのが怖いだけなんです。」
 
「怖い?一人になるのが?」
 
少女には少年の言っている言葉の意味が理解できなかった。
 
「僕は小さい頃にお母さんと約束しました。今でもその約束を守っているだけなんです・・・」
 
 

 
それは、少年が幼い頃に交わした、たった一つの約束。
 
「いいレオ、よく聞くのよ?」
 
「なあにママ?」
 
「もし、ママやパパが、あなたの元からいなくなったらあなたはどうする?」
 
母親は小さな息子に問いかける。
 
「いやだよ、そんなの!僕はいつでもパパとママと一緒にいる!!」
 
「そう、ありがとうレオ。じゃあね、一つだけママと約束してちょうだい。」
 
「なぁに?僕なんでも聞くよ。」
 
「周りの人に対して、いつでも優しく、その人が望むことをしてあげられる優しい子で
いてちょうだい。」
 
「周りの人に?」
 
「そう、あなたが優しい子でいつづけてくれれば、周囲の人もきっとそれに答えてくれる。
そしてあなたが優しい子でいてくれる限り、私達も常に一緒よ。」
 
「ほんと!?じゃあ僕はずっと優しい子でいるよ!
自分のことも自分でちゃんとする!!約束するよ!!」
 
「いい子ね。約束よ・・・」
 
 

 
「龍京へレオ君を連れてきた後、俺は彼の書いた願い事を短冊に吊るした。
彼の願いは本当に小さなことだったよ・・・」
 
青年は言葉を詰まらせそうになったが、話を続ける。
 
「そして俺はレオ君に彼が書いた願い事を無事つけてあげたことを伝えてあげた。
その後彼は本当に満足そうに笑った後・・・小さく息を引き取った。」
 
「・・・」
 
青年の話を聞いていたレイフィムはしばらく顔を伏せていたが、突如、龍京に向かって走り出す。
 
「あっ・・・君!」
 
青年はレイフィムを止めたが、レイフィムは何も聞こえない様子で、そのまま駆けていく。
 
「やれやれ、行っちゃった、ね。・・・美月夜。」
 
美月夜と呼ばれた青年はレイフィムが走り去っていった後ろ姿を見ながらつぶやく。
 
「まあ、あの子は大丈夫だよ。たぶん根は優しい子だろうから、さ。」
 
「やれやれ、その根拠のない発言はどこからくるんだろうね。」
 
「簡単さ。小さい頃のお前にそっくりだから。なあ、ルディス?」
 
美月夜は意地悪く笑った後、ルディスのほうを見る。
 
「・・・ふん!」
 
するとルディスはバツが悪そうに顔を逸らした。
 
 

 
レイフィムは必死に走っていた。
龍京の奥、あの木の麓に向かって。
 
(うそ・・・うそよ!だって、さっきまで話ししてたじゃない!!)
 
息も絶え絶えになりながらも懸命に両足を前へと突き出す。
心臓がバクバクと動悸し、破裂しそうになるが、それでもレイフィムは走り続けた。
 
街につく頃にはすっかり夜になっていた。
そしてようやくレイフィムは多量の短冊がつるされた木の根元へとやってくる。
 
「レオ・・・レオは!?」
 
必死になって周囲を見渡すレイフィム。
しかし周囲には誰の姿もない。
 
(レオ・・・!!)
 
地面に手をつき、肩を落とすレイフィム。
その全身はガクガクと奮えていた。
 
(やっぱりあなたはもう存在しないの・・・?じゃあ何故・・・)
 
レイフィムは両手を強く握り、そのまま地面を叩く。
 
(どうして?なぜあなたは私の元に現れたの!?)
 
そしてレイフィムは頭上を見上げる。
そこには大きな木が風に吹かれて揺れている。
 
(・・・?)
 
レイフィムは右手で目をこする。
なんだか一瞬木の周りが光った気がしたからだ。
 
『おねえちゃんが寂しそうだったから・・・』
 
「レオ・・・?」
 
レイフィムの頭に響く少年の声。
 
『お姉ちゃんはきっともう気づいてるよね。
一人は寂しいってことに・・・。』
 
(・・・気づいてたわよ!でも、どうすることもできなかった!!
どうしていいかなんてわからなかったのよ!!)
 
『大丈夫・・・おねえちゃんなら・・・』
 
「え・・・?」
 
「ねえ、お姉ちゃん。僕の願いは叶ったんだよ。」
 
「レオの・・・願い?」
 
『うん、僕はようやくお母さんに会えた・・・。お父さんにも・・・。
だからお姉ちゃんもそんなに苦しまないで。』
 
「レオ・・・」
 
『お姉ちゃんは・・・生きているから、生きられるから・・・。だから楽しく・・・』
 
「・・・」
 
レイフィムはしばし俯いていたが、やがて意を決したように顔をあげる。
 
「レオ。今度は私があなたと約束する。生まれ変わったつもりで必死で生きて・・・」
 
そして、目から涙をこぼしながらも会心の笑みを浮かべた。
 
「あなたの分まで楽しくこの世を生きぬいてやるわよ!!」
 
その言葉を聞いた少年は、優しく笑った・・・ようにレイフィムには見えた。

「ありがとうお姉ちゃん・・・またね。」

そしてレオは光をまといながら、その姿を消していった。
 
 
 

 
一升瓶を片手にヴァルアースは少しフラつきながら、龍京の奥へとやってきた。
 
(おや?あれはクロカゲとレイフィム・・・?)
 
視線の先に見覚えのある人影が見えた気がしたが、とりあえず気にしないことにする。
 
(まあ、いっかー。なんだか取り込み中みたいだし。)
 
そしてあらかじめ用意してあった短冊を取り出し、くくりつけようとする。
しかしそこで何かに気づいたヴァルアースの手はピタリと止まった。
 
「く・・・くく・・・あはははは!!」
 
突如笑い出すヴァルアース。
その手には既にくくりつけられている短冊が軽く載せられていた。
 
(まったく・・・あの子らしいわね。)
 
そしてそこに記載されている文章を目で追ってみた。
 
『この世界がみんなにとっていつまでも楽しい世界でありますように
ーレイフィムー』
 
空には綺麗に欠けた三日月がゆらゆらと揺れていた。
 
 
 
 
 
 
 
 


<あとがきがわりに>

本来、〆切日を考えても、オリジナルの方を進めるべきだったのでしょうが、
なんとなく、書いてみたいなと思い、今回のお話を書いてみました。

なんというか、全然ギャグじゃないですね。
すみません;;

たまにマジメなお話も書きたくなることがあったりもするわけでしかし・・・

まあ今回はさらっと読み流していただき、次回はまた笑える話を書こうと思っております!

では本日はこのへんで失礼~

P.S
今週はこれを書いたので、オリジナルは〆切までに間に合わないかもしれません。
そのときは編集長、ご勘弁を(ぁ
 




 
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