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今回の話はぶっちゃけラテとは全く関係ないんですがね・・・w
まあ割と長く続けていると出会いもあれば別れもあります。
そんな思いで書き上げた・・・ってとこでしょうか。
お読みいただく場合はつづきをどうぞ
[赤いさとうきび畑]
龍京へ向かう旅路の途中、青年に連れられた少女はゆっくりと進んでいく。
そのときふと一陣の風が花びらと共に舞う。
「わぁ・・・ここは本当にいつ来ても綺麗ですね。」
白髪の少女は青年に向かって感嘆の声をあげる。
「全くだ。こんな平穏な日々がずっと続くといいのにな。」
蒼髪の青年はそう言いながら少女に対して穏やかな笑みを見せる。
(しかしさとうきび畑か・・・。なんだか思い出すな、あの頃のことを・・・。)
青年はそのまま空を仰いだ。
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「はぁ・・・はぁ・・・」
青年はふらつきながらも龍京に向かって懸命に歩く。
しかしその全身は傷だらけで、ついにその場に倒れこんでしまった。
(くそ、身体がいうことをきいてくれない、ここまでか・・・)
徐々に意識が遠のき、青年はゆっくりと目を閉じる。
気を失った青年の下にやがて一人の少女がかけよってくる。
「あのー・・・、大丈夫ですか?」
少女は青年の肩を軽く揺すってみるが反応はない。
ふと見ると青年は背中に傷を負っている様子がみてとれる。
「あやや、すごい怪我。」
「レンレン、どうしたの?」
「あっ、なっちゃん。この人がここに倒れててね、動かないの。」
「んー、どれどれ・・・」
その場にやってきたもう一人の少女は青年の下で膝をつき、様子を見る。
「見た目はひどいけど出血ももう止まってるしきっと大丈夫よ。
痛みで気を失ったんじゃないかな。」
少女はその場で立ち上がり、もう一人の少女に呼びかける。
「レンレン、しょうがないから治してあげて。」
「うん、任せて~。」
少女は目を閉じ呪文の詠唱を始める。
すると青年の周りに淡い光が集まり、傷を塞いでいく。
「ん・・・」
青年は意識を取り戻し、顔をあげた。
「気がついたみたいね。大丈夫?」
「君達が助けてくれたのか?」
「お礼ならこの子に言ってね。レンレンが見つけてなかったらあなたはここで
倒れたままだったよきっと。」
「そうか、お礼を言わなければいけないな。ありがとう。」
青年は少女に向かって深く頭をあげた。
「どういたしまして、なのですよ~」
少女はお礼に対し、満面の笑顔で答える。
「俺はハルという。アルカディアを散策していたんだが、ちょっとドジを踏んで
しまったんだ。君達は?」
「私はナユネ。この子は翠恋よ。」
「私達は双子なんですよ~」
「そうか、確かにそっくりだな。」
ナユネと翠恋は互いに肩までで髪を切り込み、後ろ髪をリボンで結んでいる。
違うのは髪の色と雰囲気くらいで、遠目で見る分には確かにほとんど見分けは
つかない。
「ひとまず龍京にいきましょう。すぐそこだし、少しは休んだほうがいいでしょう。
歩ける?」
ナユネはハルに向かって手を差し出した。
「ああ、大丈夫だ。一人で立てる。」
ハルはそういってその場から立ち上がる。
「いきましょう。」
3人はそのまま龍京に向かって歩き出した。
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[龍京]
龍京についた頃には日は落ちていたが、何故か道は人であふれ返っており、街は
喧騒に包まれている。
「すごい人だな。一体どうしたんだろう?」
「知らないの?今日は龍京で夏祭りがあるの。だからじゃないかな。」
「わーい、お祭りお祭り♪」
街の様子を見た翠恋は喜び、その場から走りだした。
「あー、レンレン、あまり急ぐと転ぶ・・・」
「きゃっ」
ナユネがそう言った直後、翠恋は何もないところで見事にすっころんだ。
「てへへ。」
翠恋は地面に座り込んだまま舌を出し、頭を掻いた。
「ほらほら、急がなくたってお祭りは逃げやしないわよ。」
ナユネはそう言いながら翠恋の頭を撫でた。
(祭りか。そういえば最近戦いばかりでこういう雰囲気の中にいるのも久しぶりかも
しれないな。)
二人の様子を見ていたハルはほのかに笑みを浮かべた。
「あ、君。せっかくだからもう少し付き合ってよ。」
「ん?何に?」
「お祭りよ、お・ま・つ・り。どうせ暇なんでしょ?」
「暇・・・って、俺は仕事が・・・それにこういう雰囲気はどうも・・・」
「あら、助けてあげた恩も忘れてしまうような薄情な人なのかしら?」
「う・・・」
ハルは痛いところをつかれてたじろぐ。
「わかった。付き合うよ・・・」
「わーい、お店がいっぱいだよ!なっちゃん、どこからいこう?」
「そうねー、射的なんかどう?」
「え~、私苦手だよぅ・・・」
「あはは、私がなんでもとってあげるからさ。」
「ほんとっ!じゃあいくっ!」
(なんだかほほえましいな。)
はしゃぎながら夜店に向かって駆け出す翠恋とナユネをハルは追いかけた。
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「あら、いらっしゃい!」
夜店の前にきた3人を威勢の良い女性が呼び止める。
「一回100Elyや。見事当てたら景品はなんでももっていってええで!どうや、
やらへんか?」
「それじゃやらせていただこうかしら。」
「はい、まいど~♪」
売り子の女性はナユネの方ではなくハルの方へ向かって手を差し出した。
「ん?なんだこの手は?」
「にいちゃん、ゼニは男が気前よく払うもんやで。」
「はぁ!?やるのはこの子らだろう?俺は関係ない・・・」
「男のクセにケチケチするんやない!それともあんたはそんな甲斐性なしなんか?」
「むぅ・・・わかったよ。」
ハルはしぶしぶ財布を取り出し、お金を支払った。
「まいど、それじゃ、にいちゃんからどうぞ!」
そういって銃をハルに手渡した。
「俺がやるのか?」
「がんばって~」
翠恋が声援をあげる中、隣でナユネはにやにや笑っている。
その様子がハルには挑発しているかのように見えた。
(むぅ、見てろよ・・・)
ハルは景品に向かって銃を構え、引き金を引いた。
しかし弾はあさってのほうへ飛んでいく。
「はずれ~」
「むぅ、おかしいな?もう一回だ!」
ハルは再度100Ely支払い、銃を構えて引き金をひく。
しかし弾はまたあさってのほうへ飛んでいく。
「またまたはずれ~、にいちゃん下手やなぁ。」
「むむ、こんなはずは・・・」
その後も何度か挑んだが、結局景品には一発も当たらなかった。
「あーあ、見ちゃいられないわね。貸して!」
その様子を見かねたナユネはハルから銃を奪い、構えた。
スコン!!
ナユネの放った銃弾は見事にペンギンのぬいぐるみに命中し、棚から落とした。
「おぉ、姉ちゃんやるな!」
「なっちゃんすごい~」
「えへへ、まあこんなものよ。」
調子に乗ったナユネは続けざまに棚の景品を落としていく。
「すごいすごい♪」
翠恋はその様子を見て、目を輝かせながら感嘆の声をあげる。
しかしハルはつまらなさそうに口を尖らせている。
「あっはっは!まあ、にいちゃん、気をおとしなって!」
売り子の女性はハルの傍に歩みより、バンバンとハルの肩をたたいた。
「・・・なんだよ、まだ何か用か?」
「そんなぶっきらぼうな顔しなや。これもっていきぃ」
女性はそういってぬいぐるみを一つハルに手渡した。
「プレゼントや。あんたのあまりのセンスのなさに敬意を表して、な!」
(ひょっとして俺バカにされてるのか・・・?)
ハルは顔を背けながらもぬいぐるみを受け取る。
ナユネも気が済んだようで、銃を女性に返した。
「ありがとな~。あ、そうそう。」
店を後にしようとした3人を売り子の女性は呼び止める。
「この後、境内で花火をあげるんや。もしよかったら見に行くとええで。」
「あら、ご丁寧にありがとう。」
「わーい、花火だ~」
「なんか色々気を利かせてくれてすまないな。」
「ええって、ええって。このアーリ、義理と人情には厚いんや!」
「お姉さん、さようなら~」
「おぅっ!嬢ちゃんもよかったらまたおいでな!」
「うんっ!」
翠恋はアーリに向かって手を振りながら、その場から離れていった。
「それじゃもう少し店を回ってから境内にいってみましょう。」
「さんせー♪」
3人は店を回り、色々物をつまみながら、祭りを見て回った。
「まったく、しかしよく食べるよ・・・」
ハルは財布を少し開けて中を見た後、ふぅ、と小さくため息をついた。
「何か言ったかしら?」
「いーえ、何も。」
「そう、ならいいの。それじゃそろそろ境内にいってみましょ。」
3人は階段を上り、お寺の境内にいってみた。
中は既に人だかりが出来ており、わずかにあいたスペースに腰を下ろす。
ヒュ~・・・ドーン!!
空に様々な色の花火が美しい模様を描き、散っていく。
「綺麗だね~」
「本当ね。」
「・・・そうだな。」
3人は素直に感想を述べ、しばしその場の雰囲気を楽しんだ。
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しばらくすると一通り花火はあがったようで、人々は境内を降り始める。
「それじゃ私達もそろそろいきましょうか。」
「うん、楽しかったね~」
ハルはふと目を細めて遠くを見る。
(こんなに落ち着いて夜空を見上げるのは随分ぶりだろう・・・)
しゃにむにモンスターとの戦いを続けてきた彼にとってそれは忘れていた風景だった。
「ハルさん、どうしたの?」
「ん、なんでもない。こんな平和が続くといいなって。」
「何言ってるのよ。」
ナユネはハルの言葉を聞いて、やれやれといった感じで両手を振る。
「そのために私達は戦うんでしょ。ただ平和に楽しく生きたいから、ね。」
「そうだな・・・」
街の中央まで共に歩き、先をいくナユネは足を止めた。
「今日は楽しかったわ。ありがとう。」
「うん、楽しかった♪」
「いや、礼をいうのは俺のほうかもしれないな。忘れていた大事なものを思い出させて
もらったような気がする。」
「何よ、急にあらたまって。」
「最近闇雲に戦ってきたから、戦う意味を忘れかけていたのかもしれない。」
「やーね、そんなにたいそうなことじゃないでしょ。もう少し頭やわらかくしなきゃ!」
「むぅ・・・まあ、そうかもしれないな。」
「それじゃ私達はここで。」
「さようなら~」
「ああ、さようなら。」
ハルはナユネと翠恋に別れを告げて、振り返る。
(そうだよな。ただ平穏の日々を送りたいから、そのために戦うんだな・・・)
ハルは星の瞬く夜空をもう一度見上げた。
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「ハルさん、どうしたんですか?ぼうっとしちゃって。」
「あ・・・ああ、いや、なんでもないんだ。」
「そうですか?」
白髪の少女、メイリーナはハルに向かって再度呼びかける。
「でも本当、平和になってよかったですよね。こんな日がずっと続くといいですね。」
「ああ、人は慣れてしまうと、そんな当たり前のことも忘れてしまうからな。」
「私は楽しみですよ。これからこんなに広い世界を見て回れるんですから!」
「そうだな。・・・いこうか。」
「はい!」
2人はそのまま道を進んでいった。
(ナユネさんに翠恋・・・か。いつかまた会えるだろうか。)
ハルは遠くを眺めた後、ふっとため息をついた。
そして再度歩みだした。ただひたすら前を向いて・・・。
<あとがきがわりに>
いやぁ、大概友人の登場させるパターンは戦闘で活躍して、魅力を出すって定番
なのですが、今回はあえてほのぼの路線に挑戦してみました。
誰か他の人を中心にした外伝を書こう、書こうと思っていたのですが、ようやく重い
腰をあげましたよ(ぁ
まあ当人達とはゲーム内ではあわなくなったのですが、またどこかで読んでいただ
けると嬉しいな、と思います。
下記イラストは今回のお話に登場したお二人です。
せっかくなのでご紹介しておきましょう。